いつもここに書くのは愚痴ばかりのようが気がするのですが、今回も例によって例のごとく愚痴っていうか自己完結っていうか。もういいさ。なんじゃこら。結局何が言いたかったんでしょうねえ・・・。いやまったく。ちっとも甘くならないし。だれかリリカルを書くいいコツを教えてくださいませ・・・。
へるぷ





彼は誰よりも華やかに笑う
彼は誰よりも鮮やかに笑う
彼は誰よりも上手に笑う
俺が、その笑顔が全部嘘なのに気づいたのは
出会ってから随分と後のことだった





だから今は あいつが嘘をついた時はすぐにわかる。
笑う回数が多くなる
微かに、ほんの微かに声が震える
あいつが嘘をついた時はすぐにわかる



「まあ、今は確実に嘘をついている状態だな」
そう言って南条は、ほんの少しだけ、体をソファに預けた。上等のソファは音を立てることもなく、南条の体を優しく受け止める。ふんわりとした感触に一瞬だけ目を閉じるが、また直ぐに目を開き、南条は何故か酷く冷静な心情で自分から少し離れたところにあるテレビの画面を見つめた。
南条が家に帰ってきてテレビをつけたのは本当にただの気まぐれで。
何も考えずに部屋に入ったら、何故か手がリモコンに伸びていた。いつもは部屋に入るなりテレビをつけるなんて事はしないのだが、体が勝手に動いた。これが俗に言う無意識の行動というやつだろうか。まあ。そんな事はどうでも良い。そんな事をぼんやりと考えながらとにかく無意識にテレビをつけると――――
居たわけだ。彼が。
『はいはいはいそんなわけでオレ様ことブラウン様は!なんと今この地域じゃ結構有名な心霊スポットにいちゃうわけですねー!』
・・・・ブラウン管の中で彼は、ご自慢の笑顔で大きな声で笑っていた。
彼はマイクを片手に大げさなリアクションで後ろの景色を指差してみせる。後ろには錆びれた、今にも崩れそうなトンネルがひっそりと存在している。画面の右下には、赤色で「堂々生中継!心霊トンネルの謎が今夜明らかに!!」といかにもな仰々しい書体で書いてあった。心霊トンネルだかなんだか知らないが南条はそんな物にあまり興味はわかない。
興味はわかない。―――――――――が。
彼が、明らかにいつもと違う笑顔で笑っていたから。
だから南条は、ついその番組に見入ってしまう事になっていた。
どうやら良くある心霊番組の類で、彼はそのどこかの心霊スポットのレポーターをしているらしかったのだが。
『今日は地元の人に幽霊トンネルとして恐れられてるこの○×トンネルに、オレ様たち一行が潜入しちゃいたいと思いマース!生だから何が起こるか分からないこのスリル感!スタジオの皆さんびびっちゃってませんか〜!?』
南条は深く溜息をついた。
「「びびっちゃっている」のは貴様だろうが・・」
他の誰にも分からない、南条だけが見抜く事のできる微妙な変化。今この上杉を見ている人物で、上杉の声が震えている事に誰が気づいていただろう?上杉がいつもとは違う笑い方をしている事に―――彼以外の誰が気づいていただろう?
そう言って南条はまた深く息をつき、ソファに腰掛けた。
どうしてこの男は自分に出来ない仕事までホイホイ入れてしまうのだ―――。逃げる事と認めることは違うというのに。

南条がそんな考えを巡らせているうちに、上杉とスタッフらはトンネルの中へと入っていったようだった。あるのは照明の明かりだけで、上杉の声がひび割れた壁に響いて、いつもの彼の声とは多少違って聞こえる。
―――――仕事を選べないということは辛いことだな
確か、上杉はこういったお化けだとか霊だとかいう存在には酷く恐怖心を持っていた気がする。あの頃は平気で悪魔と戦っていたのに。あっちの方が霊などよりよほど危険な存在だっただろう?
そう考えるとなんだかおかしくなってしまい。南条は一人小さく笑った。画面の向こう側でおびえている上杉には申し訳ないとは多少思ったが。

だが、そんな思考も、テレビから突如聞こえてきた音に一気に中断された。
テレビの画面には何も映っていない。どうやら照明器具に何らかの異常がでたらしい。真っ暗な画面に、微かに動く人影が理解できる。
まずい、このままだと――――――
『ちょ、ちょっとどうしたんすか!?いきなり真っ暗にっ・・なんで・・・っちょっと皆!!』
上杉の混乱した声が聞こえる。その混乱はスタジオにも伝わったらしく、スタジオの中に居る司会の人物が「どうしました?上杉くん?おーい」などと呼びかけをしてはいるがどうやら混乱した上杉には届いていないらしい。スタジオにはざわめきが起こりスタッフの指示を飛ばす声が遠く聞こえてきた。いまだ画面は真っ暗なままで、上杉と数人のスタッフ声が重なって聞こえてくる。

南条は思わず立ち上がり、テレビの方へと歩み寄っていた。

「上杉!落ち着け上杉!」
決して南条の声が届くことはなかったが南条は声を出さずにはいられなかった。
まずい―――――――このままでは上杉の恐怖心はもっと募り・・ふとしたきっかけで上杉の意思とは関係無しにペルソナを発動させてしまうかもしれない―――・・こんなところで、しかも生中継中でペルソナをだしてしまったら―――――


南条の頭を不安が横切る。
そうなったら、確実に更なる混乱を招く。ひょっとしたら上杉のタレント生命も―――――・・・

『大丈夫です。照明直りました!』
大きな声が響く。南条はその声につられ更に画面に食い入る。
大丈夫―・・だったか?

スタジオからは司会やゲストの安堵した声が漏れた。
しかし

『うわあああああああああ!!!!!』

また突如上杉の声か誰の声かわからない声が響いた。
そしてその後誰かが機材を倒してしまったのだろう、何か物が倒れる音が盛大に鳴り響く。次々と声が上がる。何かが割れる音。また倒れた音。そして
『上杉危ないっっ!!!!!』
スタッフのうちの誰かが叫んだ。

駄目だ

ペルソナだけは呼ぶな上杉!

ペルソナだけは・・・・・




『うわあああぁぁぁぁぁぁ南条―――――――――っっっっ!!!!!!』








は?












次の瞬間、照明が復活し明かりがついた。
画面にはしゃがみこみ頭を抱える上杉が映し出されている。
『あうぇ?』
上杉が間抜けな声を出して顔を上げると同時に、
南条はこめかみ辺りを指で押さえた。






「だー―――かああらああ。あの時はオレ様もいっぱいいっぱいで――――」
電話口の向こうから上杉の情けない声が響く。あれから一時騒動はあったものの中継は無事終わった。番組終了後、南条からかけた電話によって、上杉は南条からお叱りを受けていた。
「だからと言って人の名前を生中継で叫ぶ奴がどこにいる」
「ああもう怒らないでよ南条〜」
「怒ってなどいないが、ただ警告をだな」
「嘘―――その声は怒ってるって!」
「くどいぞ上杉。・・・・・・・・だがしかし―――」



上杉、自分が身の危険を感じたというのに、何故ペルソナではなく俺の名を呼んだのだ?


そう聞こうとして――――南条は口をつぐんだ。
「ん?何なに南条?」
「いや。何でもない」
「なんなんスか?気になるじゃないスかあ!」



つまり、それは。
ペルソナよりも俺の事を頼りにしてくれたととってもいいのか?




俺は非力だぞ?ペルソナのように力もないし俺単体では魔法も使えない。




だが、まあ。
それも悪くないか。




南条は、静かに微笑んだ。
「何でもないさ」
「〜〜〜?変な南条〜・・」






FIN 
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