どうでも。いい話。




「んでさんでさ。そん時にマネージャーがね」
「上杉」
「ひでえのよ!?俺様が身を粉にして働いてるっていうのにさあ!今日中にインタビュー5本終わらせるって!死ぬっつうのよ!マジで!」
「上杉」
「そんでもってそのインタビューの人がさあ!何て言うんだっけ?インタビューラー?インタビュラ?インタビュニスト?」
「上杉!」

そこでようやく上杉は言葉を止めた。
「何よ」
「何。では無い。貴様もう少し静かに話せないのか」
「え?」
「・・・・場所を考えろ」



率直に言ってしまえば。今南条と上杉は混雑した電車の中に乗っている。

先日、いきなり上杉から会おうと言われたので言われるがままについてきた南条であったが、まさかこんな混雑した電車に乗って移動するとは思っていなかった。
大体いつも移動の手段といえば車で。こんな混みあった電車に揺られるとはまさか思っても見なかった。
南条はもともと人ごみが好きなほうではない。そして上杉は十分にそれを知っている。にもかかわらず南条を連れ出したのには、何かしら理由があったのだろう。

とにかく南条は、黙ってこの男についていくしかなかった。いつもとは少し違う髪形。深い色のサングラス。一応本人は顔を隠しているつもりなのだろうが、薄々周りの人間も気づいているらしい。時々「上杉」「ブラウン」などと言う単語が聞こえてきた。
わけもわからず、南条は少しだけ機嫌が悪くなった。
「なんじょ?どしたん?」
そう問うてくる上杉にも、南条は目を閉じて「なんでもない」と答えるしかなかった。
さっきから、耳に入ってくる若い女たちの声。その声が自分の・・・自分の恋人の名を簡単につむぐ。南条は感情の理由がわからず、ふるふると首をふった。




どうでもいい。話。



そして南条が連れてこられた先は・・・映画館だった。
映画館などめったに来たことがない南条は少し不思議そうな顔をして上杉の顔を見る。上杉は少しだけ笑って・・・映画館の方を指差した。
目の悪い南条は気づかなかったが、目をこらしてみてようやく上杉の意図がつかめた。

看板にでかでかと映し出されているのは今隣にいる赤毛の男の顔。その隣にはベテラン女優ともいえる・・・しかし実際は年はあまり変わらなかったはずだ。の女が写っていた。

「じゃん」
そう言って上杉は南条の顔の前にチケットを二枚、差し出す。
南条はますます自分の口が堅く結ばれるのを感じた。

『君をさがしていた。ずっと。あの夏の日から』
なんだかよくわからないアオリ文がかかれたそのチケットには、手をつないだ上杉とその女優。下の方には「あのお笑いタレント『上杉秀彦』が、衝撃のラブロマンスを演じる―――。今秋、いよいよ公開!」と陳腐な文章が。


南条は、やっと、言葉を発した。
「これを・・・見ろというのか?」


「もち!俺様の初主演の映画っすよ!!南条。見てくれるよね!!??」
あまりに純粋な笑顔でそう言い放つ。
南条は、力なく頷くしかなかった。




どうでも、いい話。




『待って!私・・・・ずっと・・・・』
『もう言い。言わなくてもわかってる』
『違うの!私が待ってたのは!敦士!貴方なの!!!』
『ユリ・・・』

画面の中で激しく上杉・・・いや。『敦士』と『ユリ』が激しく抱き合う。


南条は、ズボンの上に置いた手を、少しだけ固く握った。

そして、敦士とユリが倒れこみ、どんどん敦士がユリの服に手を伸ばし、剥いでいく。


南条は、奥歯をかみ締め、暗い映画館の中で、目を閉じた。


『敦士・・・敦士』
『ユリ・・・・・・・・・・愛してる』


上杉の口からでたその言葉に南条はとうとう堪えきれなくなり、しかし暗い闇の中ではどうすることも出来ず・・・ただ、無機質なシーツの音を聞き、ただこの映画が早く終わるのを願うしかなかった。





どうでも、いい話。





「で」
「へ?」


映画は終わり、次々と人が出て行く。涙を拭っている女性。「パンフかわなきゃ!」と騒ぐカップル。「もう一回見ない?」と囁きあう者たち。


そして、今にも見るもの全てを凍りつかせそうな目で上杉をにらむ、南条圭。



「で・・・・って南条。俺様、すごかったっしょ?初主演でさあ!ほめてよほめてよ」
「そうか」
南条は目を閉じ、こめかみあたりを抑える。
上杉が今抱いている感情は本当に純粋なものであろう。マルチタレントとして活動し始めてはや数年。とうとうこの男は主演映画にまでこぎつけたのだ。客観的に見れば目覚しい発展ぶりで、本当によくやったとほめてやるべきなのだろう。ここは。

しかし。

しかしだ。

「上杉。よくやったな」
そう言葉をかけてやると上杉はぱあっと笑顔をまきちらし場所をわきまえず甘えてこようとする。その上杉を寸前で押しとどめ、その赤い頭に拳固を一つ落としてやる。
「いでっ」
「それはそうだ。殴ったのだからな。」
「そりゃそうっすけど」
「上杉」
「なんすか」


南条は、目の前の男に軽く視線を注いでやる。それだけで上杉が少したじろぐのがわかった。昔からこの男の弱点はかわらない。こうやってまっすぐに見つめてやるだけで、すぐにその存在はたちまち小さくなる。

「・・・・なんすか」
「よくやった。よくやったが・・・・」



本当に、どうでもいい話。


「俺のものが・・・他の女の目を見て愛しているなどと囁くのは、見ていて非常に辛いものだったのだが?」





「んなっ!!!」




「家についたら、覚えていろ」



南条は、周りに人がもうすっかり居ないのを確認すると、
強引に、上杉の唇を塞いだ。





fin









南条さん。性格ちがうくないですか?(大笑)ずっとやりたかった話のくせになんだかむちゃむちゃ単調な話になってしまいました。しかも当初の予定はこれブ南でしたよね?カジョさん・・・?

そんな日もある。


とりあえず最近本当に更新していなくてこりゃやべえと思い、突発小説でした。
あああ。ぺるの無駄に長編小説がかきたいなあ・・・。ネタはあるんですよ。ちかぢか本当にやるかも!!
期待はしちゃだめですよ!負け!!(笑)


                                         
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