寒い。その上短い。だからなんの計画もなしにいきなり書き始めるのはいいかげんやめなさい。貴方。もうこれについては特にコメントなし。


重大発表。
なんとこの話、続きます。しかも裏で(爆!!!)
コール
上杉秀彦という男は

どうにもこうにも話すことが好きらしく、よく授業中にも無駄口を叩いていて教師に怒られては周りの生徒に笑われたりしている。
それは南条圭の前でももちろん例外ではなく、むすりと口を閉ざした無愛想な南条の前でも、例え南条がどうでもいいと思う事でも平気でしゃべり続ける。

上杉秀彦という男は

そんなわけで話すことが大好きなので、一日置きに、南条が頼みもしないのに南条の家に電話をかけては一時間は受話器の向こうで話続けるのはもはや日課となりつつあった。



『もうこんな時間か・・・』
ふと南条が自室にかけてある時計を見上げるともう直ぐ夜の10時になろうとしているところだった。手にしたシャープペンシルを机に置く。カタリと音を立て、シンプルな色とデザインで構成されたそれは少しだけ転がった。
ふと南条は時計から目を離し・・・もう一度時計を見てみる。

『・・・・今日は、無いのか?』
そう心の中で呟いてみてから『べ、別に待っているわけではないぞ!』と誰に突っ込まれているわけでもないのに慌てて言い訳をしてみる。しかし昨日は電話がなかったので今日は確実に電話があるはずなのだ。上杉はこのところその日課だけは欠かしたことが無い。毎日の予習復習もやってこないクセに。と南条は背もたれに大きく体重を任せてみる。キシ・・と軽く音を立ててそれは南条の体を受け止めた。ふと横を見やれば棚の上には充電器にささった携帯電話。
『だ、誰がこっちから電話など・・・』そう呟き、また視線を戻してしまった。しかしどう考えても遅すぎる。上杉はこれだけは欠かした事がないというのに。
気がつくと、南条の手は上杉の携帯番号をプッシュしていた。
しかし、何度コールしても上杉はでない。
一回
二回
三回
四回
五回


・・・六回
「こちらは、留守番サービスセンターです。発信音の後に・・・・」
プツン
そこで南条は「切」ボタンを押してしまった。
ただ。ただ一回電話に上杉が出なかった。それだけなのに。

ふと南条の胸を嫌な予感がよぎる。南条は上杉の自宅に電話をしようと思って・・・。気がついた。自分は上杉の自宅の番号なんか知らない・・・。
「・・・クソっ」
いかにも南条圭にはふさわしくないと思われる声を吐いて、南条は部屋を飛び出した。

ひょっとしたらもう寝てしまっているのかもしれない。ひょっとしたらただ今電話が傍にないだけなのかもしれない。

『なのに・・この気持ちはなんなんだ!?』
こんな気持ちはかつて南条は経験したことなど無いものである。胸の奥がざわざわする。どうしてしまったんだ・・・。


そんな事を考えながら南条は家を飛び出す。急いで走り・・とりあえずは上杉の家の方向を目指してみる。風を切り、南条のまとめられた髪がほんの少しだけ風に揺れた。

そして


「!?」

ふと。南条は足を止めた。なぜかは分からないが。とにかく南条はそこで足を止めてしまった。本当になぜかはまったく分からなかったが。南条の体はそこで止まった方がいいと判断したのだ。

そこは、小さな公園の前だった。
南条は小さく首をかしげながらその公園の中へ足を踏み入れてみる。上等な革靴の下で、砂が小さくジャリ・・と音を立てた。


「・・・・・」

そこで、南条は思わず目を見張ってしまう事になる。


目の前には小さなベンチがあり、そこに横たわっていたのは・・・・
「う〜・・・・なん・・・じょ・・・ぐう」


『こ、この男は〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!』
「起きろ馬鹿男―――――――っっっ!!!」
そう叫びながら南条は何故かベンチで安眠を貪っていた赤毛の男にゴスッと拳骨を一つ落としてやる。
「!!!???んあ??―――――――――なんじょ?何してんスかこんな所で」
「それはこっちの科白だ馬鹿者・・・」
南条はがっくりと肩を落とし、少しでもこの男に心配をしたことを心から後悔した。



「いやいや〜まったく参ったっスね本当に〜。オレ様家帰ろうとしたらほんっと急にものすげえ眠たくなっちまってちょっと寝たら直ぐこれよ。なにこの夜空って感じぃ?」
「だから・・・電話にも気づかなかったというわけか・・・」
そういうと上杉は「へ?電話?」と言い、急いで自分のポケットから携帯を取り出した。派手なストラップがじゃらじゃらと音を立てる。
「南条・・・・・・。
もしかして、心配、してくれたの?オレ様が電話しないし電話にも出ないもんだから」
ふと南条の顔を見てやればいかにも言葉に詰まったのが丸分かりと言ったふうに南条は顔をうつむかせている。
上杉はふふっと軽く笑ってみせた。
次の瞬間、南条はその男の体温を直に感じることになる。
「なっっ・・・何を・・・・!!放せ。放さないか!!」
「嫌だ」
そういうと上杉は南条を自らのほうに引き寄せた。ぎゅっと南条を抱きしめ、上杉はさっきのふざけた声とはまったく違う、真剣な声を南条の耳元でささやかせた。

「ごめんね。南条」
そう言って、いまだ不満そうな表情を浮かべる恋人に、優しく、深い口付けを落とした。


南条は、軽く上杉の制服を掴むと、静かに目を閉じた。


fin

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